「…嫌だよ、ゼン…!私、自分の身は自分で護るって言ったのに…!」


ゼンに覆い被さる木片をどかそうと、私は必死に手を動かす。


手のひらが、焼けつくように痛いけど、そんなの関係ない。


「…何言ってんの」


は、とゼンが笑みをこぼした。


「…俺が助けようと思ったんだから」


その微かな笑顔までも、炎に呑まれてしまいそうだった。



近くにいた人たちも、ゼンを助けようと手伝ってくれた。


けど、ゼンはその人たちに向けて、こう言った。



「…俺なんかより、この街を大事にして」



こんなときにでも、ゼンは優しくて。


自分の命より、街を救えって言うことなんて、なかなか出来ないのに。



そんな言葉をさらっと口に出来るゼンが、とても強く見えた。


でも、街の人たちはゼンを助けようとすることを止めなかったし、私も諦めなかった。