◆◆◆


もう一時間は過ぎただろうか。



炎は、まだ消えることはなかった。


ただ、その威力は弱まってきていることが見てとれた。



それもそうだ。


街のほとんどの住人が、消火作業に参加しているんだから。


子供たちを、安全な場所へ避難させ、大人たちはひたすら動き回っている。



…俺たちも、必死に手伝っていた。


誰かに頼まれたわけでもなく、自主的に。



俺は、水を汲んだバケツを持ち、走って来るその姿を横目で捉えた。


「…だいぶ、弱まってきたね!」


「…ああ」


「あと一息だねっ!」


よし、と自分自身に気合いを入れたララに、俺は訊ねた。


「…何でそんなに必死なの」


瞬間、ララの体がビクッと強張ったのがわかった。


「あ…当たり前だよ?この街燃えちゃうの、嫌だもん」


ララはすぐに冷静を装って、無理やり笑った。