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もう一時間は過ぎただろうか。
炎は、まだ消えることはなかった。
ただ、その威力は弱まってきていることが見てとれた。
それもそうだ。
街のほとんどの住人が、消火作業に参加しているんだから。
子供たちを、安全な場所へ避難させ、大人たちはひたすら動き回っている。
…俺たちも、必死に手伝っていた。
誰かに頼まれたわけでもなく、自主的に。
俺は、水を汲んだバケツを持ち、走って来るその姿を横目で捉えた。
「…だいぶ、弱まってきたね!」
「…ああ」
「あと一息だねっ!」
よし、と自分自身に気合いを入れたララに、俺は訊ねた。
「…何でそんなに必死なの」
瞬間、ララの体がビクッと強張ったのがわかった。
「あ…当たり前だよ?この街燃えちゃうの、嫌だもん」
ララはすぐに冷静を装って、無理やり笑った。


