「陽菜ちゃん、あの人が水色の彼?」


唯一彼を見た事のないチィちゃんは、社学を出ると開口一番に私にそう尋ねた


「そ、そう!」


私が彼女にそう説明すると、嬉しそうにトモちゃんが「邪魔してごめんねぇ~」と言った


「は!?何が??」


慌てて前を歩くトモちゃんを追いかけるが、今日はヒールが高いので歩きにくい


「もう、挨拶だけして帰ろうと思ったのに……何でついてきちゃったの?」

「いや、普通に皆と一緒に帰るから!!」

「えー彼と一緒に帰ったらええやん♪」


ダメだ……

天性なのか、私にはいじられる才能がある

こうなってしまえば、もう何を言ってもかなわない事は、この19年生きてきた中で痛いほど学んできた事だ


「違う!待て!!ただの友達、ってかそれ以下?知り合いだから!!」


ここでこんな風に粘っても意味のない事は重々承知だが、それでも私は誤解を解こうと言葉を口にはする


「まぁまぁ。めちゃめちゃ陽菜ちゃんに似合ってたと思うんやけど」


もう、想像上の彼ではなく、本当の彼の姿を確認したチィちゃんの妄想は、私の知らないところでどこまでレベルアップしているのだろうか……

その事に恐ろしさを感じながらも、私はこの日の帰り道、彼女たちが飽きるまでこのネタで振り回され続けたのだった