龍矢、怒ってるかな?


それとも仕事に夢中で、私が出て来たことにも気づいてないとか?


「社長室から来たんだよね?」


「はい」


「いつまでもこんなところに居たらダメだからさ。戻らない?」


「ダメ?」


「さっきから美和ちゃん、ここ通る人たちみんなに見られてるよ」


山下さんが私の耳元でささやいた。


「えっ!?」


周りを見回すと、そこは社長室から結構離れた場所。


しかも、経理部とか商品開発部とかスーツを着た人たちがいっぱい。


わー気づかずこんなところまで来ちゃったんだ。


真っ直ぐ歩いてただけなのに。


スーツを着た人が通るたび、私をちらちら見てく。


「なんで?」