廊下に出ると、会議室に居た男の人が立ち話をしてた。


「どうなんだあの子」


「あー、お菓子作りの先生に受かった子?」


「社長の奥さんらしいな」


「それでか」


「こんな大きな会社が、あんな若い子雇うわけないだろ」


「もっと有名どころ連れてくるって」


やっぱり、そう思ってる人いるんだ。


その人たちの前を通るとき、しまったって顔して。


私にお辞儀をした。


私も会釈をして、通り過ぎた。


私にお辞儀をしたのは、私が龍矢の奥さんだから。


社長夫人だから。


「ごめんなさい」


廊下を曲がったところで、誰かにぶつかってしまった。