『他の奴はあんたの身分に気にしていて…』
あの男に言われた言葉は再び脳裏に浮かんだ。
あたしの身分?
馬鹿にしないでよ!
「あたしだって金持ちの娘に生まれてきたかったわけじゃない…」
静かに奈緒は呟いた。
…やばい、泣きそうだ。
でも、絶対泣かない、泣くもんか。
あんな男のせいで…!
『どうせ何もかも手に入るお嬢様には分からないだろうけどな』
再びあの男に言われた言葉が脳裏に浮かんだ。
…あたしがいつ何もかも手に入るなんて言った?
端から見ればあたしは幸せ者だと?
…最低最悪。
二度と会いたくない、そう思った。

