君とはじめて。〜契約恋愛〜


「それとも何?大好きなパパに言いつける?
戸高グループの社員である俺を解雇するように頼むの?」

まるで馬鹿な扱いのような見下し方。


黙って聞いてれば、相手の言いたい放題。


「…帰ります」


そう言って鞄を取って急ぐかのようにドアに手をかけて男に体を向けてこう言った。


「態度に出てたのは謝ります。だけど馬鹿にしないで。
あと家のことも持ち込むなんてやめてください。
あなたみたいな最低な人、初めて見ました」

そう言ってすぐにドアを開き、自分だけ会計をして店を出た。



…悔しい、悔しい、悔しい



頭の中はそれだけだった。


なぜあそこまで?
あんな風に馬鹿にされて黙って聞くほどあたしは大人なんかじゃない。




やっぱり行くんじゃなかった。最低だ…


幾度後悔の念が襲ってきても、もう遅かった。