母の言いたいことはあたしでもわかった。
確かに、経済困難である現代…。
いつ、何が起こっても仕方がない。
「…それでね、朝倉には跡継ぎもいない…。奈緒には結婚してその人と一緒に共同して継いでもらいたいの…。」
…―結婚…。
「戸高グループとは今までより、親密になるわ…。
そして共同していくことで、経済困難にも心配はいらない…。」
「…はい」
これは真剣で重要な話。
だがあたしはもうすでに決意していた。
「…奈緒には椎也君とぜひ、結婚してもらいたいって思ってる…。相手だって喜んで引き受けてくれたわ。……でもね、奈緒。
無理にとは言わないの。
奈緒にだって好きな人ぐらいいるかもしれないし、今まで我慢させてきた分、奈緒に好きなようにさせたいもの…。
自分の気持ちを優先して…?」
そう言って母は微笑んだ。
「………お母様」
「…奈緒は家のことは考えなくていいんだ…
今は好きなようにしなさい」
「…お父様…」
話が終わって、父と母は自分の部屋に帰っていった。
………―結婚、か。
しばらくずっと下を向いて奈緒は考えていた。

