いかにも挑発かのような嫌味混じりの言葉に反応してしまう自分がいた。
……無視よ、無視!
あんな奴に関わりたくない…。
そんな気持ちと憎しみしか沸かない奈緒はその場を離れようと身を急いだ。
「…なんで言わなかった?あんたの大好きなパパに。俺を解雇できたはずだろ?」
…―意味が分からない。何言ってるの?…この人。
さきほどとは別人かのような態度に目を丸くする。
(……やっぱり、こっちが本性か。)
呆れてしまう。こんな低レベルな脳回路に。
どうしたらそんな事を想像できるわけ?
「あの合コンのとき、俺にムカついたはずだし憎んだはずだ。だからあんたが父親をバックにして俺を解雇するように頼むかとずっと思っていたのに。
2週間たった今、何も起こらないし、逆に朝倉グループとコラボ開発が決定するほどの推進ぶり。これも実はあんたの企みだったり?」
クスッと微笑む彼はただの悪戯にしか見えない。
そんな椎也の言葉を聞いて黙ってられるほどの大人でもなかった。
「…意味が分からないのですが…?そんな低レベルな考えする人初めてです」
…いいかげんにしてよ。
馬鹿にするのも見下すのも…!

