「そこでだ。ぜひ、奈緒と椎也君には仲良くなってほしい」
……――は?
意味の分からない父の発言に奈緒は目を丸くした。
(…仲良く?)
「私は、奈緒に。戸高社長は椎也くん。
…合う時間は今より減るだろうし、自分の娘や息子を傍においておけない辛さ。…心配なんだ、奈緒。
ずっとほったらかしにして早数年経った。奈緒だってもう18、立派な大人だ。好きな男の一人や二人、できてもおかしくない。
だが、見ず知らずの男に我が愛する娘を手放すのも父としては絶えられない。
もし、奈緒が信頼ある戸高会長の息子、椎也君と良い関係になってくれれば…
…父としても安心するし嬉しいんだ…。」
…いまいち状況がつかめないとはあたしだけ?
「案外、結婚までいきそうだなぁ、朝倉君」
…結婚!?
満円の笑顔で微笑む戸高会長。その隣にも笑顔を崩さないあの男の顔。
「まぁ、お互いの子供たちを結婚させたいなーみたいな話もしてたしな」
…ぎょっとする。
父の思いがけない言葉に寒気がした。

