君とはじめて。〜契約恋愛〜



「二人は初めてじゃないのかね?」

椎也の「久しぶり」という言葉に疑問をもった父が尋ねた。

「いえ、実は以前お会いする機会がありまして…そのときに少しお話を…」

丁寧に笑顔で返す椎也を見て奈緒は静かにこう思った。


(猫かぶり…)

にっこりと笑顔を崩さない彼。
2週間前の自分にした態度と全く激変、というような姿を見てあきれてしまった。


「そうだったのか!そりゃぁよかった。実はな奈緒、我が朝倉と戸高グループで共同開発プロジェクトを実施するようになったんだ。戸高会長とは昔からの長い付き合いでお互い信頼もあるし、お互いが組めば、より一層世界の幅を広くげることができる。」

…共同プロジェクト。

「そ…う、なんですか…」

「ああ。これからはもっと忙しくなってもっと会えなくなるかも知れない」


―会えなくなるかもしれない―…

…そんな…。もっとって…
一年に一回でさえ少ないのに…。

父の言葉に愕然とする奈緒。まさかの事態に肩を下ろした。