「奈緒!」
突然自分の名前を呼ぶ父の方へ体を向けた。
「お父様!」
「ちょうどよかった。さっき話していた紹介の件なんだが…―」
―――紹介?…さっきの話か…
「久しぶりだね。奈緒ちゃん」
―……!
そこには優しい顔で微笑む父と同じ年齢ぐらいのおじさんが立っていた。
一見、誰か気づかなかったが、奈緒はこの人を知っていた。以前、会ったことがあるからだ。
「お久しぶりです」
にこっと微笑み返す奈緒。久しぶりに会うこの人…―そう。戸高グループの会長だった。
父と接待の多い戸高グループ。長年の付き合いで二人が仲がいいことも奈緒はしっていた。
何回かパーティでお会いしている奈緒だったが、今回、久しぶりに戸高会長に会ったのだ。
「みるみるうちに美人になってくなぁ。うちにはもったいないですよ」
……―――は?

