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嫌でも朝は来た。
昨日の今日なのかいつもより憂鬱な朝。
「お嬢様、おはようございます。お目覚めですか?」
「真理子さん、おはようございます」
真理子さんは奈緒のお手伝いの一人。小さいから奈緒のために努めており、奈緒が信頼している人でもある。
「さきほどご主人様が…」
「え!?お父様が!?」
真理子さんの言葉に驚く反面、嬉しさでいっぱいになった。
お父様が、帰っているなんて…。
「はい。ですがすぐお出になられました」
「…そう…ですか」
…所詮これが現実だ。先ほどまでの明るい顔もどんより沈んだ顔に変わっていく。
「お嬢様…」
心配そうに見つめる真理子さんに気づいた奈緒は何もないように明るく振舞った。
「学校に行ってきますね」
「はい、車のほう、手配させております。
いってらっしゃいませ、お嬢様」
「行ってきます。真理子さん」
これが、あたしの一日の始まりだ。
いつもと何も変わらない…日。

