「…うるせーな。仕方ねえじゃん。
大体お前等だって思ってたはずだ。」
「そうだけどさー…」
…―めんどくせーな。そんなこと気にしてたら先に進めねえ。
言ったことは仕方ねえし、しったこっちゃない。
本心で椎也は思っていた。
どうせ父親使ってどうにかするんだろーな。
椎也は必ずあいつは俺に仕返しのように仕事上でお返しでもするんだろう。
それは絶対的だ、そう思っていた…
それからは気を取り直して何もなかったかのような空気で事を進めた。
椎もすべて忘れたかのように、場を盛り上げた。
奈緒の事情も知らずに…。
−−−−−−−−−−
楽しい時間もあっという間に終わり、会計をするために椎はカウンターへ向かった。
もちろんお勘定なんて男持ち。それは暗黙の了解で決まりのようなものだった。
店員に清算を請求されて椎は目を丸くした。
なぜならその金額は自分が思っていた金額より安かったからだ。
「…あのー計算間違えてない?」
彼は素直にそう店員に尋ねた。ここで黙っておけば安い金額で済んだかもしれないのに、正義感の強い椎には割りにあわなかった。みしろそこが、彼のいいところなのだろう。

