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一方、奈緒が帰って後室内は異様な雰囲気に包まれていた。
『あなたみたいな最低な人、初めて見ました』
さきほど言われた奈緒の言葉が少しショックだったのか、脳裏から中々離れなかったのは事実だ。
…彼。戸高椎也は日本で1、2を争うほど有名な戸高企業の息子。いわゆる御曹司だ。
本店である東京勤務の総務部で有用な社員として扱われている。
確かに、親の七光りと思う人もいるが、彼は頭がすごくきれる人物。次期戸高グループの社長にもなるこの男は責任感もつよく曲がったことが嫌い、そんな男だ。
だからなのか、奈緒の態度にすごく腹を立て、遺憾を表した。
黙って見てるなんて彼にはできなかったのだろう。いくら世界大手企業の娘だとしても、彼女の祖罰な行為を教えないといけない、彼女自身が理解しないと。と、そう思ったのである。
…ちょっと言い過ぎたかもな。
後になって、少し罪悪感に浸るのも彼の悪い癖。
「おい…お前なぁ…ヤバイんじゃねーの?
あの女…世界大手企業の朝倉グループのご令嬢だろ?
朝倉グループって世界貿易機関専門…。しかも仮にもうちの取引相手でもあるんだぞ?
援助だってしてもらってる部分もあるし…本当にあの女が父親に言いつけたらお前一環の終わりだぞ」
しんとした空気の中で先に口を開いたのは同じ総務部でもある川田幸人だ。
唯一俺が社長の息子、とういう立場を気にせず対等にしてくれる男でもある。

