「変わってないなぁ…」

仕事にも、恋愛にも、

都会の生活にも疲れて、

生まれ育った故郷へ帰って来た。


「…懐かしい」

目の前に、昔よく遊んだ公園。

「あいつ…元気かな」

ブランコに腰掛けて、

ふと思い出してみる。

家がとなりだった、幼なじみの男の子。

一緒に遊んで、ケンカもして。

恋愛の相談もされたっけ。

あたし…好きだったんだよ、

知らないだろうけど。


「あれっ…もしかして…おまえ」

聞き覚えのある声に、

思わず顔を上げたら。

「あっ…」

見慣れないスーツを着て、

あいつが立ってた。


「…何やってんだよ、こんなとこで」

そう言いながら、

もうひとつのブランコに座る。

「そっちこそ」

「俺?俺は仕事の帰り。一応中学の教師」

「ふーん…」

言いながら、あいつにもらった缶コーヒーを一口。

小さい頃の夢…叶えたんだね。

「…大丈夫か?」

「…え?」

「帰ってくるなんてよほどのことだろ。仕事…しんどいのか?」

あいつの優しい声に泣きそうになる。

「何でもないよ…ちょっと疲れただけ。明日にはかえ…」

「明日には帰るから」

そう言いかけた瞬間、

あいつに抱きしめられた。


「ちょっと…どうしたの」

「戻ってこい」

「え…?」

「俺…おまえのことが好きだ。ずっと好きだったんだよ」

うそ…でしょ…?

あたしは思わず、

持ってた缶コーヒーを落とした。

「もう離したくない。だから…」

「いいの…?あたし戻ってきて」

「当たり前だろ」

そういって、ゆっくりキスをした。


…ただいま。

あなたの腕の中が…あたしの帰る場所だね。