兄貴の想い


大泣きしている私をよそに、先生は落ち着いた様子でヒデに何があったのか聞いていた。


一通り状況を把握したのか、先生はやっと治療を始めてくれた。


治療をしながら先生はヒデに言った。


『これは縫わなきゃダメだなぁ…。少し痛いかもしれないからお兄ちゃんはこの子をなだめてあげてて。』


『はい。』


ヒデは小さく返事した。


そして、暴れる私をヒデと看護士が押さえつけ6針を縫う治療は終わった。



保険証もお金も持っていなかったヒデに先生は言っていた。


『明日、お父さんかお母さんと一緒にまた来てください。お金はそのときでいいから保険証は忘れないようにね。』

『はい。ありがとうございました。』

『一応、私の方からお家へ連絡は入れるけど、お兄ちゃんはちゃんとお父さんやお母さんに説明できるかな?』

『はい。大丈夫です。』



そして、包帯でグルグル巻きにされた私とヒデはゆっくり歩きながら家路についたのだ。