文学乙女

「−驚くと思いませんでしたよ」





三枝さんは運転をしながら、さも楽しそうに笑っている。





「顔知ってるだろうと思って、敢えて黙ってたんですけど」





「驚きますよ」





あたしは顔を赤らめながら言った。





「最初見た時、「えっ、誰?」って思いましたもん」





「驚かすつもりは、なかったんですけどね」





三枝さんは苦笑する。





この前までは、飾り気すら全くない、至って地味な文学青年だったのに。





久々に会ったら、今風のイケメンに大変身している(言い方は大ゲサだけど)。




「あの…三枝、さん?」





「はい」





「…あの…前に会った時と違って、随分雰囲気変わりましたね」





「雰囲気…?ああ、この格好ですか。−今、文学館でイベントやってるんですよ」





「イベント?」





「会員制のイベントがあって、せっかくだから、越野さんを招待しなさいって言われたんです」





「あたしを?」





「ええ。西嶋先生も越野さんの話を聞いて、ぜひお会いしたいって言ってたので、連れてきてくれって頼まれたんです」





「西嶋先生って…あの俳人の?」





「はい」