文学乙女

あたしは複雑な心境で、手に持ってる紙を見る。





「お願いします…」





諦めた気分で、彼に渋々紙を渡した。





「お名前教えて下さい」





彼は、ゴソゴソと水色シャツの胸ポケットからボールペンを取る。





「越野です」





あたしは自分の名字を教えた。





彼は「こしの様…」と言って、自分の左手の甲にぎこちない手付きで書く。





「5分程、お時間少々かかりますが」





「大丈夫です…」





彼はボールペンの先端を戻して、胸ポケットにしまった。





「お持ちしますので、近くに掛けてお待ち下さい」





空いている小型の椅子を勧めると、にこやかに会釈してカウンターの奥の部屋へ去った。