「リオール」


名前を

呼ばれた。




滅多に俺の名を呼ぶ者はいない。


コイツ以外は…。


「……セシル…」

「流石、大天使様のご子息様。
堂々と禁断の森に入りますか」



嫌味な言葉遣いと紳士的な仕種で

奴は俺に近付いた。



「五月蝿い、去れ」

「こんなとこにいると、毒されますよ〜?」



セシルは辺りを見回した。


俺達が今いる、通称『禁断の森』は、限りなく

『此処』と『人間界』が近い場所だ。





此処は…


『天界』

俺達は、『天使』だ。





「お前達ほど力は弱くないんだ。
この辺だったら大丈夫だ」

「おーおー、生まれが良いお方は言うことが違うねえ」

「黙れ。それができないのならば去れ。でないと消すぞ」


俺はセシルの前で掌を広げた。


セシルはそんなのお構いなしで喋り続ける。



「アイツら、悪魔どもは普通に人間界に行くらしいがな」

「…フン…羨ましい限りだな…」

「…リオール。…仮にも大天使様の一人息子が悪魔に憧れるなんて…あってはならないことだぞ」

「……」






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