チリン チリン・・・チリン・・・  


となりから、風鈴の音。


その風鈴を愛おしげに見つめる
おゆきさんの手には
さっきの風鈴屋で見つけた
小さな風鈴が手にしてある。


風鈴の絵は、『ヒバリ』


仲のよさそうな2対のヒバリが
ついばみあっているという姿が
描かれていた。


頭の中に
いやでもふたりを
初めてみかけた日のことがよみがえる。


もしかしたらゆきさんは
あの日のことを思いだし
この風鈴を選んだのだろうかと
そんな
下世話なことまで思ってしまう。


風鈴に描かれた
2対のヒバリを
自分と、
晴信くんになぞらえているのだろうか・・・。


自分を選ぶことなく
ほかの女を選んだ男。


彼女の思いに気づかずに、
自分の婚礼衣装を縫ってほしいと頼む男を
ずっとずっと
想いつづけていた彼女は
いま、何を考えているのだろう・・・。