おゆきさんが
幼なじみの晴信くんを
慕っていることは
ずいぶん前から
はっきり気づいていた。

だから てっきり
彼女の想いが
彼に届いたのだと思っていたのに・・・。


バツが悪く、
その場をどうごまかしたらいいか
わからないでいる俺に


バシッ!!


彼女は俺の背中を強くたたき
いつもの笑顔でこう言った。


「なに、考えているんですか?」


「いや・・・その・・・」


あせって言葉の出ない俺に、


「・・・煉さん、知っているんでしょう?」


イタズラめいた
大きな瞳で彼女は言う。


「心配しないでくださいね! 
 わたし、大丈夫ですから!」


ふふっと笑って
彼女はかけだした。
すこし行ったところで振り返り


「これから晴信の着物を仕立てるんです!」


「婚礼にわたしの仕立てた着物が
 どうしても着たいって言うから!」


両手にかかえて、
大切そうに持っている反物を
ギュッと抱きしめ
彼女は言った。