けれど当初
俺たちはこの町ではなく
もっとさきの町をめざして
やってきた。



『この町は単なる通過点』


リュウは今も
そう考えているのかもしれない。


( ここに、いたい----- )


そう思っているのは
俺だけかも知れないという気持ちで
リュウには
言い出すことができずにいた。







7日目-------。


今日がこの町に滞在する
最後の日だと思った俺は
思い切って
リュウに言おうと思った。


『もう少し、この町で暮らさないか』と。


いつになく緊張しながら
リュウに言おうとした、その、とき。



「ああ、そうだ。これ・・・」


リュウが、なにかを差し出してきた。

それは1枚の紙きれのようだった。


「なに これ?
 け・・い・・・や・くしょ・・?」


ピンとこない俺に
リュウは向こうをむいたまま言う。


「しばらくここに、いようと思う」


「茶屋のご主人から
 正式にここを借りたんだ」


相変わらず俺のほうを見ずに
淡々と話すリュウを見て
少しだけ頭にきたけど
俺ははじめて

 
「弟よ!」


と叫び、ヤツを力いっぱい抱きしめていた。