【短編】こんな恋もありでしょ。



そっとパンプスを履いて、そーっと鍵をあけて、そーーっとドアをあけて外に出た。



大きな溜息が出たのはタクシーに乗ってから。

今までに出したことないくらいの長い長い溜息を吐いた。



あんなに息を潜めたのは、生まれて初めて。

まるで泥棒にでもなったかのようだった。

すっごく悪いことをしてる気分。



仕方ない。

あんなことしちゃったんだもん。



酔った勢い。



昨日のことは……そういうことで良いんじゃないかな。


ううん、それがいい。

これはあたしの願望でもあるけど。



あたしはお酒は強い方だと思う。

記憶をなくしたことなんて今まで一度だってない。



ただ、昨日は悪酔いしてしまった。



4ヶ月半ぶりに那央に会えて嬉しくなって。

会ったことで那央を好きだと確信できた。

それに那央、結婚してなかったし。

まぁ、結婚はあたしの妄想だったけど!

まだ付き合ってすらなかったみたいだったし。



色んなことが混ざって、飲みすぎた。



あたしのペースに付き合う那央は、もちろん潰れちゃって。

多分、記憶が飛んでたんだろーな。