と、その時。

「‥‥あ、」



店先のガラスの向こうに、彼を見つけた。

今日もいつもと同じ制服に、大きなカバンを肩にかけて歩いて行く。
優しそうな横顔、風に流れる短めの黒髪。
チョコレート色のマフラーも、いつも通り。


彼の姿を見つけた瞬間、いつも顔がかぁっと熱くなる。
心臓がどきっ、と1回大きく波打って・・・
そのまましばらく、どきどきが収まらなくなるんだ。




店先が全部ガラス張りとは言っても、
そんなに大きな店ではないから、彼の姿もすぐ見えなくなる。
ほんの数秒を、噛みしめた。

この数秒はいつも・・・
店内の音楽がしん、とやんで、
時間が止まったみたいな感じがするんだ。