精神安定剤

そして、明海は、涙を流し、三つの事件のことを話し始めた。



このとき、初めて明海は、自分が悪いことをしたんだ、罪を犯したんだと感じた。
 


「男は女を見れば、自分よりも弱いと思い、自分の好きなようになると思っている。


男は弱いものにしか、向かってこない。


女だからできない、女だからこんな騒がれるって言われることが、嫌だった。


男を恨んでいた。」


と明海は、最後に自分の素直な気持ちを言って泣き崩れた。
 


加賀屋は、そんな明海を見ながら、事件を起こす前に出会っていたら、何もかも変わっていたのかもしれないと、調書を書きながら、涙を一粒流した。
 


明海もまた、もう少し早く、加賀屋に出会っていれば、自分は変われたかも知れないと感じていた。



もっと早く出会い、もっと一緒のときを過ごしたかった。



加賀屋は、私の精神安定剤だったと・・・
 


明海と加賀屋の関係は、本当に短いものだったが、それでも、お互いがお互いを必要だと肌で感じ、心で感じた、密度の濃いものだった。
 


人は、強がっていても、決して強い生き物ではない。



支えが合ってこそ、強く生きていけるのだと、今回の出来事は、しみじみと感じさせるものになっただろう。