突然のことに、明海は、何を言ったらいいのか、適当な言葉が見つからず、
 

「こちらこそよろしく。」


と、一言返すのが精一杯の言葉だった。



そして、自分の席に戻ってからも、明海は、心臓の鼓動は早く、落ち着かなかった。
 


なぜならば、加賀屋は、第三の事件で、明海と遠藤を見つけた、制服警官だったからだ。
 


明海は、普通にしていれば大丈夫、加賀屋は、何も疑っていないのだからと、一生懸命自分に言い聞かせ、冷静さを取り戻そうと必死になっていた。
 


それに対し、加賀屋は、昨日から、事件の内容や捜査状況を読み、なぜかわからないが、明海の事がひっかかってしょうがなかった。



そして、その疑いを少しでも、晴らそうと、事件の起きた日の、明海の仕事のシフトを調べた。



そうすると、事件の日、すべて仕事場にはいなかった。



そのため、加賀屋の明海への疑いは、晴れるどころか、強くなったが、まだ、これと言って明海が怪しいと、ハッキリできることは無かったので、人に話すことはしなかった。



明海に近づき、少しずつ明海を知っていこうと思ったのだ。



そして、明海は犯人ではないと、加賀屋は思いたかったのだ。



それは以前から加賀屋は、女性で第一線で活躍している、明海を尊敬していたからだ。
 


加賀屋が異動してきて一ヶ月、事件の捜査に特に進展は無かった。



そして、新たに事件も起こらなかった。



そのためか、捜査本部の規模も徐々に小さくなっていった。