精神安定剤

予想外のことが起こり、結局明海は、家に戻ることも出来ず、現場検証、捜査会議と慌しく、仕事に戻った。
 


今回の出来事は、不慮の事故の可能性も高いという、方向に進んでいたが、男性の握っていた、キーホルダーが引っかかるものも多く、一応連続犯罪と同一犯ということも頭に入れて、捜査することになった。
 



明海が、キーホルダーのことを知ったのは、捜査会議のときだった。



一瞬、

「やばい」

と思ったが、鞄についているキーホルダーなんて、男性の中ばかりの職場で気付く人はいないと、安易な考えになっていた。



しかし、キーホルダーは、木村が以前、明海に似ていると、プレゼントした、アヒルのキーホルダーだった。



だから、木村は、何処かで見たことがあると、引っかかってならなかった。



そして、木村は、明海の顔を見て、もしかして明海に以前プレゼントしたものかもしれないと感じた。



この、嫌な気持ちを早く解決したく、木村は、明海に近づき、
 

「おい、前にお前にあげた、キーホルダーどうした?」
 


一瞬、明海はドキッとしたが、
 

「私達が終わったときに、捨てた。」
 


そう答えると、足早に、明海は木村から離れた。



ふーっと息を吐くと、明海は、指紋は大丈夫かと新たな心配が出てきたが、指紋がつきそうな場所は、ほとんどないし、大丈夫だろうと、再び安易な考えになっていた。



そして、指紋は、ほとんど出ないに等しいくらいだった、犯人を特定するには全然難しいものだった。