僕はなんだかそれだけで少し嬉しくなった。
お兄ちゃん?そしてそれに続く言葉の後に、僕は…
パパもママも華のことが嫌いなんだよ。
言葉が見つからなかった…
冷たく吹き抜ける風、街の夕闇 今にも倒れてきそうなビルの影
しばらくの沈黙のあと、華…もう行くね。
僕はまるで今作ったかの様な顔で ぅうんとしか言えなかった。

小さな足取りで歩く彼女の背中を目で追いかけた、すると彼女は立ち止り
お兄ちゃん?明日もここにいる?華のこと忘れないでね?
少し照れくさそうに彼女は微笑んだ。

僕は周りも気にせず、大きく手を振った、彼女も小さく手を振った。

さっきより街の風景はずいぶん変わり無数のネオンが僕を映しあげる。
さっき感じた視線も今はなく、僕はあてもなく歩き出した。

いつもより少し足早に、白く冷たい街 車のクラクション 黒く汚れた空
いつもと変わらない街の風景 でも明日もここにきてみよう、そう素直に思えた。
なぜだかうまくは言えないけれど… ひとつ間違いなく言えることは そう たった一瞬見せた彼女の笑顔が忘れられない。

第二章へ