「お待たせしましたぁ」
愛想の良い店員に軽く会釈をし、煉は鮮やかなアヤメの花束を受け取った。
ここは毎年来る花屋で、店員はその都度代わるが、彼はいつも同じ花を買う。アヤメは零が好きだと言っていた花だからだ。
「…もう三年」
まだ、三年。
零が亡くなってから。
最初の命日の時に比べると、心の淀も幾分は軽くなった。
かと言って、彼女を忘れる事は出来ないのも事実。
(…また…会いに来たよ)
霊園に着き、真神家の、零の墓の前で、煉はしばらくアヤメを見つめていた。
明るい青紫は毎年見ても、飽きることのない美しさで。それは若くして逝ってしまった彼女の様でもあった。
──…煉は煉だから…
ふと零の言葉が脳裏を過ぎる。
「…そうだったな」
煉は花束を肩に担げ、そこに零が居るかの様に少し微笑むと、備え付けの花瓶に水を注ぎアヤメを生けた。住職の計らいで、花瓶はいつも綺麗にしてある。
「毎日でも…本当は来るべきなんだよな…。でもごめん…まだ俺に…そんな勇気無いんだ。」
煉は線香を焚き、合掌した。
そして再び墓を見上げたその時。
『…ん…れ……ん…』
