水色の空〜二度と失いたくない



「…んな訳ねぇよな」

煉は思い出しそうになった彼女のことを、無理矢理忘れようと頭を振った。

「…はぁ……」

ひとつ深く息を吸い込む。冷たい空気が熱った肺に広がりひんやり心地好い。
少し冷静になって来た煉だが、直ぐに別の焦りが頭を支配した。

(…やべぇ…学校…っ)

携帯電話を取りだし、時刻を見ると時計は10時を回っている。

(…完全に遅刻……ん?)

それと気付くのが遅れたが、画面にはもうひとつ点滅する『新着メール』の文字。誰だろうと開いてみると、授業中打ったであろう、樹からのメールが届いていた。

『サボったな。おかげでお前んちに行く事になった。茶出せよな。滝野も来るよ☆』

何がどうして自分の家に樹と、況してや滝野まで来るのが良く分からない煉だったが、取り敢えず担任を誤魔化してくれたのだろうと、納得することにした。

返事はせずに電話を閉じる。
制服のネクタイを外してブレザーを脱ぐと、少しは私服のように見えた。

「さて…」

今日の放課後行くはずだった所、零が眠る場所へ煉は歩き出す。


…いつの間にか、今まで自分を苦しめていた声は聞こえなくなっていた。