水色の空〜二度と失いたくない


学校に着き教室に入る。
何人かと挨拶を交し、樹は着席した。

「あれ?畑野君、今日はひとり?」

話しかけて来たのはクラスの女生徒“滝野 実加”。
実加の問いに樹は少し困った様子で、まぁねと答える。

煉はと言うと、もう学校は目の前という所で急に立ち止まり、何やら真剣な面持ちで学校とは逆の方に走って行ってしまった。

無論何処に行ったか樹にも分からない。しかし、樹は追い掛けるでもなく、暫し煉の走り去る背中を見守り、それから学校へと向かった。

「珍しいねぇ…今日は休みなのかなぁ氷神君…」
「さぁねぇ」

何気無く煉の机を眺めながら聞いていた実加だったが、素気なく返って来た樹の答えに少し驚き、樹に目線を戻す。

「何も聞いてないの?」
「ん?うん、俺は煉君の唯一の友達なんだけどなぁ」
「“唯一”って氷神君聞いたら怒るよ?」
「でも実際…そう思ってんの俺だけなのかなぁ…さっ寂しいなぁ…!なぁ滝野ぉ…」
「しっ知らないわよ!」

子犬のような瞳で見上げる樹に、実加はペシっと頭を叩く。

「ってぇなぁ…俺泣いちゃう…っあ!」
「…?」
「三島せんせー来た」
「…。もう…畑野君はいちいち騒ぎすぎ」
「そーかなぁ…。せんせー」
「ん?おはよう畑野。」
「おはようございますー。あのー氷神君、今日風邪で休みです」
「氷神が?…えーと…氷神病欠っと。んじゃ畑野、帰りに職員室来い。氷神のプリント渡すから、様子でも見に行って来てくれ。よし、滝野も。」
「え!?私もですか?」
「そーそー男が男の看病してもね?」
「…はぁ…わかったわよ。…っていうか、さっき風邪だなんて一言も言って無かったじゃない…?」
「そーだっけ?」

「おーい出席とるぞー!」

担任の三島の声でクラスの皆が席に着き始める。
実加も着席し、いぶかしげに樹の姿を見ていると、眠そうにあくびをしたかと思えば、机に伏せて寝てしまった。直ぐ後ろの席に人影はない。
今まで休む事なんて滅多に無かったのに、と実加はぼんやり思った。