苦しそうに息を荒くする彼女。
真神の家に連絡しようにも、彼女は“真神”ではないらしい。煉は仕方なく、家に連れて帰る事にした。

「…どーすっかな」

だが彼女を抱えて帰るには、家は遠すぎる。況してや、苦しそうにしている女の子となると、何処かのお節介が手を貸さぬとも限らない。
病院等かに連れて行かれたら最後、ヒトとは違う事がバレてしまう。

「しゃーねぇか」

煉は少しは考えたが、何より先に彼女を楽にさせたいと思った。

「大丈夫だ…もう少し我慢しろな」

そう囁くと、彼女はの潤んだ瞳で煉を見上げる。そして小さく頷くと、再び発作を起こし出してしまった。

「…迷ってられねぇな」

煉は彼女を片腕に抱き、もう片方の指で、地にある者の名前を辿った。


『どうか力を、我は貴の氷神、命を煉。御出、蘭華』


呟くようにそう唱えると、先程地に書いた名前“蘭華”が激しい風と共に光り出す。

煉は更に彼女を抱き寄せ、少しでも、と風から守りつつ、光る名前から目を離さ無かった。

「…早く来い…」

本来なら正勢し集中して行わなければならない程の、力を使う儀式。
しかし今の煉にそれは関係無かった。