妄想バレンタイン《短編》

「これ…さっき渡せなかったから」


歩ちゃんは小さな紙袋を俺に差し出した。


「何…これ」


「何って…今日がなんの日か考えればすぐわかるでしょ」



今日はバレンタインデーだった。


散々な一日だった………って、あれ?



「もしかしてチョコレート!?俺に!?…あっ、でも義理だよね」


「義理だったら、一時間も待ってたりしないよ」


「そりゃそうか。…えっ、じゃあ…」


「これ以上は言わない。でもね、さっき、荒川君が誰からもチョコレート貰えなかったって聞いた時、やったぁ〜って思っちゃった」


歩ちゃんはペロッと舌を出すと、恥ずかしそうに笑った。