妄想バレンタイン《短編》

22時になった。


「お先っす」


俺は力無くコンビニの制服を脱ぐと、挨拶をして店を出た。


自転車にまたがった瞬間に俺を呼ぶ声。


そろそろと視線を上げると、そこには二本の足をきちんと揃えて、姿勢良く立っている女の子。




「歩ちゃん…?」


先に帰ったはずの歩ちゃんがどうしてここに?



「忘れ物?」


歩ちゃんはコクリと頷いた。


そして、頷いた拍子にずり落ちた眼鏡を、いつものように指でちょいと直した。