妄想バレンタイン《短編》

「さあ、仕事仕事!!」


これ以上突っ込まれるのが嫌だったので、俺は大きな声を出すとコンビニの制服を着て、商品の陳列を始めた。


そうこうするうちに客もちらほら入ってきて、多少は忙しくなってきた。



しかし、ホッとしたのもつかの間…。



新しく届いた弁当を並べていると、歩ちゃんがコソッと聞いてきた。


「荒川君、本当にチョコレートもらえなかったの?一つも…?」



歩ちゃん!


歩ちゃんだけは、そんなこと言わないと信じてたのに〜!



「う、うん。もらってないよ。モテない男も辛いよね?ははは〜」


「そうなんだ」



歩ちゃんはクスッと笑った。



…………笑われた。


今、俺の頭の中では、お寺にあるようなデカイ鐘が、グワングワン鳴っているのだった。