妄想バレンタイン《短編》

俺は通学路から外れて、街中に向かった。


バスターミナルの目の前にある小さなコンビニ。


俺は自転車を停めると店内に入った。


「ちーっす。お疲れっす」


商品棚の陰から、パートのおばさんが顔を出した。


「ああ、荒川君。お疲れ様。ん〜?その顔だと…あんた今日、全然貰えなかったね?」



………。


痛い所をつきやがって。



「歩ちゃん、ほらね?私の予想当たったでしょう?」


おばさんの隣にいた歩ちゃんがちょっと困った顔で笑った。


歩ちゃんは、「読書が趣味です」っていうような、大人しい印象の女の子。


よく眼鏡がずり落ちて、それを直す仕草が可愛いと言えないこともない。


とにかく、京子ちゃんとは正反対の、あまり目立たない女の子だ。