妄想バレンタイン《短編》

「おい菊地。これ頼まれた」


朝っぱらから机につっぷして居眠りしている菊地の頭の上に、ピンクの包みを乗せた。


「ふぁ…。え…なに…?」


「お前に渡すように頼まれたんだよ。……京子ちゃんに」


「あぁ…」


菊地はチョコレートを受け取ると、鞄の中にしまった。


そしてまた居眠りを始めたが、菊地の寝ぼけまなこの奥の動揺を、俺は見逃さなかった。



ビックカップル誕生の日も近いかもな…。



俺はすでにたくさんのチョコレートでパンパンに膨らんだ菊地の鞄を見ながら溜め息をついた。