東京にも雪が降った

慣れた手付きで目覚ましを止める

いつもと変わらない朝

4年の歳月は

君を俺の日常から

消去るには十分過ぎるほどだった

もう思い出すこともない


2009年1月20日

虎ノ門にある小さな法律事務所

運命の足音は

着実に近づいてきた


「あのー、こちらに朝倉弁護士がいらっしゃると…」

「ん?」

先輩の林が入ってきた女性に気づいた

「ええ、とりあえずこちらでお待ち下さい。」

応接に女性を通し 

イタズラっぽく俺に近づいて来た

「オイッ!」

脅かすつもりだったらしく

無反応な俺にがっかりしてるようだ

「どうかしました?」

「どうかしましたじゃないよ、ご指名さ」

応接を指差し 不機嫌そうな林

「俺をですか?」

まだ新米の俺を指名するなんて

普通じゃありえないことだ

首を傾げる俺に 

林が羨ましそうに言った

「きれいな子だったよぉ~、このやろー」

「はぁ。。。。。」

手帳を片手に応接の前まで来た

深呼吸をしてゆっくりドアを開ける

「お待たせいたし………」

彼女と目が合ったその瞬間

忘れかけた思い出が走馬灯のように蘇る

静止した時間を打ち破ったのは

俺の手の中から落ちた手帳だった

慌てて手帳を拾い上げる

「なつき……」

「ひさし………ぶり」

彼女はバツが悪そうに下を向いた

「ひさしぶり……だね、本当に…」