「俺の女に何してんの?」


低く、冷たい声があたしの耳に届いた。

あたし彼氏とかいないんですけど、どちら様?

そんな事を考えている余裕もない。

声の主はあたしの肩を抱いていて、顔を見ることはできない。


「…なっ………チッ」


信吾は気圧されたように、顔を歪め、あたしの前から去って行った。


はぁ…

信吾の姿が見えなくなると、やっと肩の力が抜けた。


「大丈夫か?」


忘れてた…―!

肩に触れられていたことを思い出して、咄嗟に距離をとって振り向く。


「……?もしよかったら、送ってく――」
「ありがとうございましたっ!!」


助けてくれた人が、何か言っていたようだったけど、あたしは深々とお辞儀して走ってその場を後にした。