「ありがとう」
やっとあたしの元に返ってくる。
あたしはにっこり笑顔で手を差し出す。
「………」
……
「…………」
「……早く返してよ!」
一人で笑顔作って恥ずかしいじゃないっ。
ムッとして、あたしはレンを睨み付けた。
でも、レンの目線に合わせようとすると少し上目遣いになって。
これって睨んでる効果少なくならない?
なんて思って悲しくなる。
その証拠に、レンは何食わぬ顔であたしを見下ろしてるし。
なんかずるい……
返してくれる気があるのか、さっきからストラップを弄んでるし。
プイッと顔を背けてやった。
ストラップは降りる時にでも返して貰おう。
そう決めて、流れていく外の景色を眺め小さな小さな溜息を吐いた。
