「はい。」
真由は言った。
しかし、その『はい』は、肯定の『はい』とは発音が違った。
「え?」
優斗が不意に頭を上げると、そこには袋に包まれた、バレンタインチョコ。
「あげる。チョコ。」
「ありが…とう?」
優斗は混乱した。
「あのね、わたしね、チョコ、大好きなの。」
「うん?」
「だから…、初めて、人にチョコレートあげるの。」
「?」
「だから、見ず知らずの人に、バレンタインチョコ分けてくれたり、
ラスト一個のチョコぱんをくれたり、
バレンタインデーなのに、わたしにチョコレートくれる人が…好きなの。」
真由はそこまで言って、目をそらした。
「真由ちゃん…!」
優斗は安堵したように微笑む。
「優斗くんのこと、好き…です。…わたしでよければ、お願いします。」
真由がそこまで言うと、優斗は真由を抱きしめた。
「…真由ちゃん、僕、死にそうなくらい、嬉しい。」
「…うん!」
優斗の温かさに包まれて、
チョコレートの香りに包まれて、
真由はとても幸せだった。

