放課後の静まった教室。


「俺20。お前は?」


尋ねたのは耀介。


「僕は…32個。」


机の上のバレンタインチョコをみて優斗は言った。


「やべぇな。全部食えンの?」


耀介は大量のチョコレートを眺めながら言った。


「時間かければ平気だと思うけど…、手作りが多いからなぁ。早く食べないと痛みそうなんだ。」


真剣に困った様子で優斗は言った。


「愛がこもってンなぁ!俺なんかほとんど市販。」


そう言って洋介は30円相当のハート型のチョコレートを見せた。


「さて、どうするか…。」


優斗が真剣に悩み初めると教室に女の子が現れた。


「ん?あの子、お前じゃないか?」


耀介はあごでその女の子を差した。


優斗にチョコレートを渡すために来たと推測した。


「え?」


「目がそう言ってる。俺帰るからな。」


耀介は気を利かせて教室を出る。


「ありがとう。またな。」


二人の様子をしばらく見ていた女の子は、優斗の前まで来た。


「あの…。」


もじもじと何かをためらう様子の女の子。


「はい。」


優斗はいつもどおりにこやかに返事をする。


「チョッ、チョコレート!」


「え?」


「食べたいのっ!」


そういってその女子は優斗がもらったチョコレートを指さした。


「…、これを?」


優斗は驚いた。


自分がもらった物をまさかくれという人がいるなんて思っていなかった。


「うん!あなた、優斗くんでしょ?いっぱいもらったって聞いて…。」


「あ、うん。」


「だから、食べきれないんだったら、ちょうだい?」


優斗が思わずクラリとなるほど、可愛らしい笑顔だった。


「えっと…、そうだな。お願いしていいかな?」


「ほんとぉ!?」


ちょうど、優斗も食べ切れそうにないチョコレートをどうしようか悩んでいたので、承諾した。


「でも、折角僕に、ってくれたものだから、一人分の、最低一つは食べさせてくれるかな?」


「うん!そうしてあげて!」