咲妃が王子ファン連中を何とかすると言った翌日。


見事に真由に悪口を言う者はいなくなった。


一安心と胸をなで下ろす真由だったが、
真由は移動教室中、ある人物を見つけてしまった。


「噂の本人発見。」


咲妃の声がしたが、それより先に、真由は前方の人に釘付けだった。


「佐藤優斗・・・。」


真由は一昨日の告白を思い出した途端に、恥ずかしくなった。


「来たわよ。」


咲妃の小声が聞こえて、佐藤優斗は真由達の横を通り過ぎた。


…何事もなかったかのように。


「…。」



きづかなかった…?


ううん、そんなわけない。


…見向きもしなかった。


全く、視界にとらえられてなかったみたい。



つい立ち止まって、優斗の背中を振り返る真由。


「なにアレ…?」


咲妃は不信感をあらわにした表情をしている。



少しだけ、ほんの少しだけ…信じてもいいかな…って思ってたのに。


本当に、わたしの事好きでいてくれるんじゃないかって…期待、しちゃってたのに。


ほんっと…バカみたいな『期待』。



ホントにからかってたんだ…!


『優しい王子様』ってドコが?


『嘘つき王子』。