下校時間。
「裕也!
帰るでしょ?」
「あぁ。」
裕也と一緒に歩くのは初めてだ。
「話って何?」
「あのさぁ、おまえ、中栄監督の取材のこと……
伝えたいことをうまく表現できないみたいなこと言ってなかった?」
「言った言った……。」
「俺からの提案なんだけどさ、
直接肌で感じるってのどうよ?」
隣を歩いていた同学年の女子に、
嫌らしい目で見られた。
「何を感じるのよ?」
「だから、動物の生とか死を。」
隣の女子は、真顔になってどこかへ行ってしまった。
「どういう風に?」
「実は俺さ、旅行中にハンターっつーか、
狩猟をする人に会ったんだよ。
感じのいい人だったし、子供好きそうだったし。
会ってみない?
自分と逆の考えの人の話を聞くって、
いいことだと思う。」
私は戸惑った。
命が消えてしまう瞬間を、
この目で見ることができるだろうか。
「それは怖いよ。
絶対私、その人が何かしようとするの、
見てられないで止めちゃうよ。」
「だけどいい機会だと思わないか?
一歩踏み出せよ!」
「……。」
確かに怖いが、
せっかくの裕也からの提案だ。
断ってしまうのはもったいない気がする。
「わかった。
いつ行く?」
深く考えなかった。
「ホントか?
よし!
いつでもいいよ。
しばらく土日部活ないし。」
裕也は喜んでくれた。
この笑顔のためなら、何でもできるかもしれない。


