「恋してるねぇ。」
公園でフリスビーの練習をしていると、
愛犬家友達に突然そう言われた。
彼女は、ミニチュアダックスフントを飼っている、
若い女性である。
「『恋』?」
中栄は首を傾げた。
「見ればわかるよ。
その目の輝きは、
恋する男だね。」
彼女は人差し指を立てて言った。
「は?
してねぇよ。」
中栄は苦笑いした。
「あぁ、
『気付いてない恋愛』だね。」
「何だよ、それ。」
「まんま。
自分でも気付かない恋愛のこと。」
「あのな……」
「見た感じ、職場恋愛?
ん?
違うなぁ。
現在じゃなくて、
過去の女に恋してる。」
「……」
「思い出に恋してるんだね。
ビューティフルな話!」
「……練習始めるから。」
本当に、中栄にはそんな意識はなかった。
生まれてから今まで、
『恋』なんてレベルでものごとを考えたことがない。
でも、なぜかそれは心のどこかに引っ掛かった。


