マイワールド

中栄は犬をアパートまで連れていった。

幸い、誰にも目撃されずにすんだ。

『ペット禁止』

そう書かれた板が大家の家の前に貼り付けてあった。

中栄は咳ばらいをし、
犬と一緒に歩き出した。


――吠えるなよ。吠えるなよ。


抜き足差し足でなんとか部屋に入ることができた。

「よかった……。」

中栄は胸を撫で下ろした。

「ネイルからの贈り物か……。

そう信じるよ。

名前は……何がいいかな?」

犬は『ハッハッ』と息を整えている。

「走る……ラン……。

『ラン』だ!

走って来た『ラン』だ!」

中栄の目が輝いた。

何日ぶりだろうか。


『ラン』――。

それがこの犬の名前になった。

今にも走り出しそう――『走る』を英語で『ラン』という、
単純な名前の付け方だった。

「俺、引っ越すよ!

おまえと暮らしたいから!」

中栄はランの首を撫でた。