――そんな生活を続けて二ヶ月……。
もうダメだと思い始めた頃、奇跡が起きた。
それは、仕事帰りのことだった。
いつものように、深夜、
音楽を聴きながら孤独な町を歩いていた。
その時、
「ワン!」
どこからか犬の声がした。
中栄はイヤホンを外した。
「……犬?」
別に犬が欲しかったわけではないが、
なぜか無意識に足が止まった。
「ハッ……ハッ……」
軽快な息遣いが後ろから聞こえた。
「ネイル!」
振り返った途端、
思わずそう呼んでしまった。
大きな体についた力強い尻尾を振りながら、
そのジャーマンシェパードは中栄に近づいて来た。
「なんだよ……。
ネイルか?」
中栄は、この状況がまだ理解できていなかった。
「ワン!」
犬は力強く吠えて迫って来た。
中栄はそいつに歩み寄った。
「ネイルからのプレゼントだ!」
中栄は犬を抱きしめた。
ボロボロの毛――。
どこからどう見てものら犬だった。
「飼ってやるよ。」


