「おはよう。」
優菜が爽やかに言った。
中栄はまた二番のりだった。
「おはよ……」
目を合わせないようにして事務室に入った。
もちろん、優菜はついてきた。
「一人にさせてくれないか?」
「やだよ。」
「……?」
「ここ、仕事場なの。
周りに人がいるのは当たり前じゃない?」
「どこのルールだよ?」
「あたしのルール。」
「……。」
中栄は深くため息をついた。
「で、泣いたの?
昨日の夜は。」
優菜は、中栄を気遣うことなく、
こんな質問をした。
彼女は全てを知っている様子だった。
「泣かなかったし、
泣けなかった。
よくわかんなかった……。」
中栄はボソッと言った。
「そう。
ネイルちゃんとあんたは運命の出会いをしたんじゃなかったの?」
「俺にとってはそうだったかもしれないけど、
ネイルにとっては違うだろうから。」
「こういう時ぐらい、
自己満足の世界でビービー泣けばいいのに。」
「そうじゃなくて。」
「じゃぁ何?」
「まだあいつと会って一年しか経ってない……」
「思い出作りの時間が足りなかったってこと?」
「……。」
「それ、嘘だよ。一年たらずなんて、
多すぎるぐらいの時間じゃん。
たった一日だって思い出、
作ろうと思えば作れるはずだけど。」
「……うるせぇ。」
――伝わらない……。


