「あ!
中栄さん。
……」
川村動物園の園長の海野(うみの)が中栄を呼んだ。
「……こんばんは。」
中栄は小さな声で言った。
「……」
「……」
二人の間に会話はなかった。
「ネイルちゃんです。」
海野は目を伏せて言った。
中栄は声を出さずにこくりと頷いた。
もう、泣く力も怒鳴る力も残っていなかった。
「ネイル……。」
今、自分がどんな気持ちなのかわからなかった。
すでに冷たくなったネイルを無表情で撫でた。
「年齢のせいもあったのでしょう……。
回復には……」
「解説はいいですから。」
海野の言葉を、中栄は遮った。
「申し訳ありませんでした。」
――謝らなくてもいいです。
それは言えなかった。
「後はお願いします。」
落ち着いて頭を下げた。
「では。」


